XYZ表色系について
そもそも、XYZって、何なの?
このページでは、「分からない」と悪名の高いXYZ表色系について、触れます。なお、もっと分からなくなっても責任は負いません…悪しからずご了承くださいね。なお、ご質問はご容赦ください。また、このページは文字だけです。読むには根性が必要です。(^^;
光の3原色はご存じのことと思います。赤、緑、青ですね。一応、ここでは漢字でいちいち書くのが面倒なので、R、G、Bとします。このRGBでいろいろな色が作り出せます。それを応用したのがカラーテレビですね。
ところで、太陽の光や、蛍光灯などの人工の光には虹の7色が含まれています。私たちがさまざまな色を見ているということは、実はその色はそうした虹の7色のさまざまな組み合わせ(混合)で見ているわけです。ということは、虹の7色が私たちが見る色の世界を決定づけているということになるわけです。逆に言えば、虹の7色の混合で、すべての色ができあがっているというわけです。
もう一度、3原色に話を戻しましょう。
光の3原色で、もし、例えば太陽光の虹の7色と全く同じ色が再現できたらどうでしょうか?
虹の7色ですべての色ができている…ということは、…もし、3原色で太陽光の虹の7色、つまりスペクトルが再現できれば、その3原色を使って、すべての色が再現できる、ということになるわけです。これはすごいですね。是非、そうしたいものです。もし、そうできれば、私たちが見ているすべての色が3色を上手く使うだけで手に入るわけですから。ところが、そう、ところが…なのです。これは不可能なのです。380nm〜780nmまでの可視光線のスペクトルを、光の3原色で再現しようとすると、実に残念なことに、光の3原色だけではスペクトルの単色光の持つような鮮やかな光の色をすべて再現することはできないのです。ということは、私たちが見ているすべての色(光の色も含めて)は、R、G、Bの3原色では再現できないということなのです。
色を効率的に表示したい。という願いから実はこのXYZ表色系は考えられています。一つの色を示すのに、例えば、照らす光を決め、そして分光分布をとり、その反射率などをすべて記録して長々と表示してもいいのですが、それでは時間と記録の手間と、記録用紙をたくさん使ってしまいますよね。ですから、なるべく手みじかに表示したい、と考えるのは人情というものです。
ここで、いろんな手が考えられました。まず、光の3原色はいろんな色が再現できる。それがすべての色を再現できなくても、かなりのものはOKだ。ここに目をつけて、もし、このRGBに代わるような、何か理想的な原色を設定してはどうだろうか。理想的な原色とは、「すべてのスペクトルを再現できるような理想の原色」ということです。
光の3原色RGBは現実の色です。これを使ってすべての色を再現しようとすると、例えば、青紫系〜黄緑系の単色光の色に合わせようとするとRの光をマイナスの量にしないとダメなのです。マイナスの光とは、どういうことでしょうか?
色を表示するのに、せっかく3原色があるのだから、その混合量で簡潔に色を表示したい。そこから始まってはみました。が、例えば青緑のスペクトル単色光をRGBで再現しようとする場合、Rの光を消し、BGの光だけではその鮮やかさは得られず、合わせようとした青緑の単色光に、さらにRの光を加えてようやく色が同じに見える(等色する)のです。青緑の単色光にRの光を加えるということは、RGBで色を合わせようとした側から見れば、Rをマイナスにする、ということになるわけです。
原色の混合量という考え方で色を表示したいという考え方からすると、その量がマイナスになるのはうまくないな。というわけで、すべてがプラスの量で表記できるようにした「仮想の原色」を考えたわけですね。それをXYZと命名したわけです。これは、手続き上では、RGBが負(マイナス)にならないように、数学的な変換を行うという手続きになります。ですから、XYZとは、もはやRGBの光ではなく、プラスの値で色を表示するために、苦肉の策(?)で考えられた仮想の原色ということになります。こうした原色のことを「原刺激」と言います。ですからXYZ三刺激値とXYZ原刺激とは意味が違います。あの計算で出てくるXYZは、XYZというそれぞれの原刺激の心理物理的量で、それをXYZ三刺激値というのです。
色というのは、私たちが目で見て感じるものです。つまり、物理的な光の照射と反射や透過といった現象に、さらに目の光に関する特性が加味されて初めて私たちの見る色になるわけです。可視光線の波長範囲は380nm〜780nm。ということは、例えば、320nmの電磁波のエネルギーがいくら強くても私たちには見えません。日焼けを起こして、顔が黒くなるのがせきのやまです。
可視光線の波長範囲の限界波長に近づくにつれて、残念なことに私たちはその色を感じなくなっていきます。最も目の感度が高い(つまり、わずかなエネルギーでも明るく見える)波長は555nmです。これはご存じのことかと思います。ですから、こうした色の感じ方も色の表示には必要になるわけです。同じエネルギー量であっても、555nmは明るく見え、760nmでは暗く見えてしまう。これが私たちの現実の見え方なのです。つまり、「心理物理的な量」が色というものです。
「心理物理的」とは、どういうことなのでしょうか。これはつまり、「目で感じる強さ」というのが「心理量」、そして、「光のエネルギー量」というのが「物理量」です。
色は、目で感じる「心理量」がもともと少ない波長の場合には、その波長のエネルギーがたくさんなければ明るく見えません。ですから、もし555nmの色光と、670nmの色光が同じ明るさに見えるようにしようとすると、670nmの光のエネルギーは555nmの光のエネルギーの何倍もの量にしなければならないわけです。従って、色というのは、物理的なエネルギーと目での見え方の特性との、かけ算で成立するものだと言えます。
XYZ表色系では、目によく見えない色(光の量が少なく見える色)は、それなりに表示しようとしていますから、目の特性も勘定に入れているのです。それが等色関数というものです。これは、ある波長の単色光と同じ色に「見えるとき」のXYZ原刺激の混合比率を示したものです。ですから、XYZ三刺激値の計算式は、照明に使う光のエネルギー比と、表示しようとする物の色の反射率(透過率)とを掛けて(ここまでが物理的量の計算になります)、そしてさらに、三つの原刺激に対してスペクトルと等しい色に「見える(=目で見えるということ)」原刺激の比率特性(つまり、等色関数=心理量)を、それぞれのスペクトルの波長ごとに掛けて、それをすべてのスペクトルについて計算し、その値を加算していく、という形になっているわけです。こうすることによって、目の感度が及ばない電磁波については、XもYもZも0(ゼロ)になってしまう、つまり目に見えない電磁波をすごくたくさん反射(または放射)する物であっても私たちには黒にしか見えない色の値として計算されるのです。
なお、色を測るときには照明する光が一定でないと値が変わってしまう(=違った色に見える)ので、標準の光というのが定められているわけです。また、目の特性にも個人差があるので、平均的な値をオーソライズしてあるわけです。これは標準観測者と言われています。その標準観測者の色の明るさに対する感度曲線を、「標準分光視感効率(比視感度)」といい、その値はyバー(等色関数で、小文字のyの上に線が引いてある記号です)に一致するようにされています。
次に、大文字のXYZではなく、小文字のxyzというのがありますね。これはいったい何なのでしょうか? 小文字のxyzはそれぞれ、X/(X+Y+Z)、Y/(X+Y+Z)、Z/(X+Y+Z)で計算される値と定義されています。X+Y+Zというのは、三つの刺激値のすべての和ですから、xyzは、「すべての刺激値の和に対する、X、Y、Zの比率」という意味になりますよね。ということは、刺激値の量ではなく、比率を示すということになります。つまり、刺激の量が多くても、少なくても(=色が明るくても暗くても)、その量には関係なく(=色の明るさには関係なく)、ある色の色み(色相)や純度(彩度)を示す値となるのです。これを、色度(しきど)と言っています。
そこで、スペクトルの色のxyzを調べ、xyだけについて、x−yの座標にプロットすると、あの馬蹄形ができあがります。スペクトル以上の鮮やかな色はありませんから、そのプロットされた馬蹄形の内部にすべての色の座標が含まれる、ということになります。あの、馬蹄形でできるxyの値では、色の色相と彩度(これらは、XYZ表色系では色相に相当するものを主波長、または補色主波長。彩度に相当するものは刺激純度と呼ばれる)はわかりますが、明るさの情報はありません。なぜなら、明るさというのは色刺激の刺激値の量に関係するからです。そこで、XYZ表色系では、X、Y、Zの三刺激値を表記する形式と、x、yと明るさに関する値を表記する形式の2通りが使われています。明るさの表記に使うものを別に定めるのは手間がかかるので、XYZ表色系では、Yが色の明るさを示すものとして定められているわけです。このように、XYZ表色系は、原刺激の混色で色を表示するシステムなので、表色系の中では、「混色系」と呼ばれる代表選手に選ばれているわけです。
なお、お断りをしておきますが、筆者自身は測色学の専門家ではありませんから、記述に正確さを欠く表現が多々あることを付記したいと思います。不明な点はどうかその道の専門の方にお問い合わせください。では。
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