配色の作法
このページでは、さまざまな配色について扱います


まずはコンセプト
配色の名前や、配色のきまりごとに入る前に、配色を行うもの(対象物)のことを考えてみましょう。実は、それを考えることがとても大切なんです。もっとも身近な衣服を例にとってみましょう。あなたが行動する場面、場所、合う人などの違いによって、きっと着る服を変えていませんか?衣服を変えるときに考えることは何ですか?

1.今日は、結婚式のパーティに出席するので、気合いを入れてオシャレをしよう
2.これから、掃除をするので、動きやすく汚れてもいい服にしよう
3.これから眠るので、パジャマに着替えよう
4.今日は一日家にいるので、気軽な服でいいや

などなど・・・・たくさんの考えがありますよね。こうしたことを含めて、よく物のTPOという事が言われます。
TPO(ティーピーオー)とは、Time Place Occasionの略で、訳せば物が存在する時間、場所、場合(場面)ということです。
あなたが着る服は、いったいどのようなTPOに合わせているのですか?と、いう感じです。そしてさらに、服を作る側になると、いわゆる5W1Hもあります。つまり、誰が(who)、いつ(when)、何を(what)、どこで(where)、なぜ(why)、どのように(how)使うのか、買うのかなどを考えなければなりません。
そして「こうしよう!」、「こういう考え方で行こう!」とさまざまなアイデアが出てきます。それをまとめたものが「コンセプト」と言われるものになります。コンセプト(concept)というのは、直訳だと「概念」となりますが、つまりは考え方ということです。

例えば、「リゾート、レジャー用のものなのだが、今はエスニック(民族調)がトレンドなので、今回はエスニックなデザインで、ちょっとざっくりした風合いで行こう!」などとなりますよね。そうした考え、コンセプトがあって、配色が選ばれていくというわけです。ですから、配色の用語は知っている方がいいですけれども、このコンセプトを上手にたてられるかどうかが最も重要な鍵を握っています。前の例だったら、「よし、それでは、スパイスの色を思い浮かべてみようか・・・」などとなるかもしれませんね。プロの方ですと、そこでスパイスを買いにスーパーに直行するかもしれませんよ。なんといっても実物の色は本当に説得力があるからです。

 そして、例えば、このような配色を考えるかもしれませんよね。では、このような配色を何と言うのか?
これは例えば基本的には「トーン・イン・トーン」と言いますが、ブルーがアクセントに入っているので、これを一言で言うような名前はありません。でもその名前よりも、その前の発想の方が大事で、まずはコンセプトを考えるというのが基本になりますよね。

(1)配色の名前
以下に掲げる配色は、横文字の名前が付いてはいますが、英語で海外の人に通じるかどうかは分かりません。通じるものもあれば通じないものもあります。日本でよく使われている名前だということを最初にお断りします。

1.トーン・オン・トーン配色 (Tone on tone )

この例を見て、すぐ分かると思いますが、色相を揃えて、トーンを変化させる配色です。例では、明暗の違いが大きいものを示しましたが、最も一般的な配色です。現実的な場面では色相が多少違ってしまうこともありますよね。その場合には、明るい色が黄み方向に偏った方が自然に見える(これは自然の光と影でできる配色で、私たちが見慣れているためです)ので、そうした方が違和感がなくなります。自然な感じに見える色相の流れのことを「色相の自然な順列」といいます。これを守った配色がいわゆる「ナチュラル配色」です。トーン・オン・トーンでは、ナチュラル配色を行います。

 これは「ナチュラル配色」 明るい色の方が暗い緑よりも色相が黄色方向に傾いている。

 これも「ナチュラル配色」の例。

2.コンプレックスカラー配色 ( complex color )

前項の「色相の自然な順列」を守らない配色を「コンプレックスカラー配色」といいます。コンプレックスとは「複雑な」という意味。違和感が感じられるところからの命名でしょう。ちょっとオシャレな配色に感じられることが多いので、ファッションなどにはちょくちょく使われます。

 これは「コンプレックスカラー配色」の例

 これも「コンプレックスカラー配色」の例

ときどき、 こんな配色を「コンプレックスカラー配色」といっているものを見かけますが、これはむしろ対照色相の配色(コントラスト配色)に分類すべきです。
コンプレックスカラー配色は色相が近い(類似色相から中差色相:PCCSの場合は色相番号差が2〜4程度)のものを指すのが通常です。

3.トーン・イン・トーン配色 ( tone in tone )

トーンを揃えた配色のことです。基本は同じトーンを使うものです。実際の場面では、「ほぼ同じトーンじゃん」くらいの感覚でいいでしょう。PCCSでいうならば、同一のトーンを使うか、もしくは類似トーンの関係にあるトーン(トーン図で隣り同士の関係にある色)を組み合わせるという考え方でいい。

4.トーナル配色 (Tonal)
濁色系のトーンを使ったトーン・イン・トーン配色のことをトーナル配色といいます。トーナルとは、英語では「トーンの」「トーンに関連した」という、それだけの意味です。英語では通じません(笑)。そもそもこの名がついたのは、アメリカの著名な色彩学者だったフェイバービレン氏(故人)が、濁色系を「トーン」と呼んでいたことに関連しているようです。なお彼はいわゆる中間色(濁色)をトーン、明清色系を「tint」(ティント)、暗清色系を「shade」(シェイド)と呼んでいます。PCCSとの関連では、d、ltg、g、sf トーンを使えばいい。


非常に渋い配色になりますよね。素朴なイメージ、落ち着いたイメージが出せる配色なので、和風、エスニックものなどにもってこいです。

5.コントラスト配色 ( contrast )
コントラストとは、対照、対比という意味です。つまり、色の差が大きいことを意味します。厳密には、色相コントラスト、明度コントラスト、彩度コントラストがあります。また、トーンの対照という意味では、トーンコントラストもあります。ですから、英語でコミュニケーションを図る場合には、何がコントラストなのかをハッキリと言わないと通じません。検定では、通常何も断りがない場合には色相コントラストを意味する、とされていますが、言葉の使い方ではコントラストの要素をはっきりさせるべきです。

色相コントラストの場合、PCCSとの関連では色相差が8〜10。ムーン・スペンサーの概念では補色関係も含んでいます。
 色相コントラスト 

 色相コントラスト

なお、明度コントラストでは、PCCSでは明度差4以上としていますが、ムーンスペンサーでは明度差2.5以上としており一定ではありません。PCCSを重視している検定では4以上をとっておけばいいでしょう。なお、彩度コントラストでは、PCCSとの関連では彩度差が7s以上としています。ムーン・スペンサーは、マンセル・システムにおいて、彩度差7以上としています。また、トーンコントラストでは、PCCSでは、トーンの用語の意味が反対になるもの、例えば「明るい:ブライト」と「暗い:ダーク」、「さえた:ビビッド」と「灰みのもの:g、ltgなど、または無彩色」などトーンの差の大きいものが該当する。

 明度コントラスト  明度コントラスト

 彩度コントラスト  彩度コントラスト

 トーンコントラスト  トーンコントラスト

6.ドミナントカラー配色 ( dominant color )

色相を統一した配色を指します。ドミナントとは「支配的な」ということ、そして、「カラー」はここでは色相を意味しています。つまり、色相を支配する配色ということです。色相を統一したグラデーションなどは、その典型ですが、グラデーションにこだわる必要はありません。
 これはグリーンによるドミナントカラー

 これはオレンジ系の色相によるドミナントカラー

カラーキープログラムなどでは、ブルーベースの配色、およびイエローベースの配色は相性が良く調和するという考え方を採っていますが、それなどもドミナントカラーの考え方がベースにあると言えるでしょう。

 この配色は、ドミナントカラーとは呼ばれませんが、すべての色がイエローの方向に寄っているので、色相の共通性を持ち、相性がいい。こんな考え方です。

7.ドミナントトーン配色 ( dominant tone )

トーンに共通性を持たせた配色を指します。同一トーンの配色になります。現実的には「まあ、だいたい同じトーン」でまとめるということになるでしょう。PCCSとの関連では、せいぜい同一トーン、または類似トーン同士くらいまででまとめる感覚です。
 これは暗いトーンによるドミナントトーン

 これは明るい灰みのトーンによるドミナントトーン

8.カマイユ配色 (camaieu )
カマイユとはフランス語で単色画を意味します。フランス現地では、トーンオントーンとの区別がはっきりしません。ただ、ニュアンスとしては、グラテーション的な濃度変化を持つ同系色相配色と解釈されます。日本での用語では、「微妙な濃度変化を伴う同一色相の配色」とされていますので、濃度変化は「微妙」な方が無難。ただし、この「微妙な」とはどれくらいの違いを指すのかは、個人の感覚に依存します。明度いくつ以内などという決まり事はありません。

 このような配色です。PCCSでは明度差が大きいため、ここまで微妙な変化は作れないかもしれません。上記の例では、明度差0.5、彩度同一で変化させ同一色相でまとめてあります。

9.オンブレ配色 ( ombre )
オンブレという配色は、下のような配色を指す一般的な言葉として、現場では非常によく使われるものです。オンブレとは「影」を意味するフランス語です。つまり、ある色に次第に影がついていく色の変化で、明度のグラデーションです。検定ではまず出ないでしょうが。
 カマイユと同じ感覚の配色となります。

10.フォカマイユ配色 (faux camaieu)
フォという言葉は、フランス語で「偽の」という意味です。カマイユに対して何が偽か、というと、色相がにせもの。つまり、色相が微妙にずれたカマイユ配色という意味で使われます。
 この例では、色相、明度ともに微妙にズレています。こうした配色です。グラテーションにする必要はありません。(当然グラデーションでもいいけれど)

 この例では、色相を赤方向や黄み方向に「微妙に」ずらし、明度は0.5ステップでやはり「微妙」に変化しています。ただし、この「微妙」はあくまでもあなたの主感です。まあ、類似色相から中差色相以内でのズラし位と思えばいいでしょう。

11.トリコロール配色 (tricolore)
トリは3を意味するラテン語が語源の言葉。コロールは色を意味する言葉です。英語では「トライカラー」(tricolor)といい、3色配色、中でもフランス国旗の3色を指す言葉となります。イタリア、フランスではともに3色配色や3色の国旗をこうよびます。ですから、意味自体は単に「3色配色」ということです。しかし、国旗の配色では、フランスやイタリアの国旗などの配色を意味する言葉としても使われます。一般にフランス国旗の3色配色を指す言葉として使われることが多いものです。

 これはフランス国旗のトリコロール 

 こちらはイタリア。

12.バイカラー配色 (bicolor)
ラテン語系では、ビコロール(bicolore)になります。biとは2のこと。ですから、2色配色という意味です。英語の方が最近は幅をきかせています。英語ではバイカラーとなります。
緑と黒のバイカラー  白とオレンジのバイカラー
ストライプや、カラーブロッキング(カラーを面積を大きくブロックのように使う使い方)のように、2色がはっきりと分かるときに良く使われる言葉です。

13.コンプリメンタリー配色 ( complementary ) / ダイアード(dyads)
コンプリメントというのは、補色という意味の英語です。補色同士を組み合わせた配色のことです。
 これは、青と黄のコンプリメンタリー。

 これは黄緑と紫を使ったコンプリメンタリー。
なお、同じ内容の配色を指すもので、ダイアードもこの配色となります。

14.スプリットコンプリメンタリー (split complementary)
ある色の、補色の両隣の色を配したもの。補色が分かれるという意味で、スプリットという言葉が使われています。
 この場合は、真ん中のオレンジに対して、互いにほぼ補色関係にある2色を使いました。
このオレンジに対しての本来の補色は、 この色なのですが、配色に使っている色は、この色の両脇に位置する色となっています。(左はやや紫み、右はやや緑みの青)

15.トライアド (triads)
ここにも「トライ」が出てきましたね。3色配色のことですが、色相環を3等分する位置の色を配色するものです。
 ここでは、オレンジを起点に、色相環をほぼ3等分する色を使っています。

16.テトラード (tetrads)
「テトラ」というのは、ラテン語で4のこと。テトラポッド(tetrapod)というのを知っているでしょう? ポッドというのは「足」のこと。海岸や堤防などに置かれている、あのテトラポッドは「4本足」という意味の物体(笑)です。
つまり4色配色を指すのですが、色相環を4等分する位置の色を使う配色です。
 ここでは、ブラウンを起点に4等分の位置にある色を使いました。

17.ペンタード (pentads)
「ペンタ」とは、5を意味します。アメリカの「ペンタゴン」は何角形の建物? そう、5角形でしょ。
色相環を5等分する位置の色の組み合わせです。また、トライアドに白、黒を加えたものも含まれます。
 ここでは、5等分の位置の色を明るいトーンで配色してみました。

 この例では、上にあったトライアドに白、黒を加えました。

18.ヘクサード ( hexads )
「ヘキ(ク)サ」とは、6のこと。色相環の6等分、または、色相環4等分の色+白、黒という2つのパターンがあります。
 この例は、色相環6等分の位置の色を配した例。

 この例は、色相4等分(トテラード)に白、黒を加えた例。

19.ユニ ( uni )
ユニとは1のこと。つまり単色。これは配色というよりも、1色使いということ。
 これはカーキの「ユニ」。

20.フォユニ ( faux uni )
ここにも「フォ」が出てきました。にせの一色。つまり、単色調のことです。少し違う色をミックスする感覚です。
 離れると一色のように見えますか? こんな感じの配色を指します。

21.モノトーン配色 ( monotone )
モノとは1のこと。同一色相での配色をモノトーンと言います。トーンは皆さんが習ったトーンのことではありません。トーンは英語では色合いを指すこともあるんです。この場合がそれで、ブルー系での配色、赤系での配色など、みなモノトーンです。
 これはバイオレットのモノトーン配色。
日本では、無彩色の配色をモノトーンというケースが多いですが、これはモノトーンの一部です。

さて、以上で(1)配色用語を終わりますが、どうだったでしょうか? 「私が習ったのと違う!」。そんな人、いませんか?
配色の用語と実際の配色は、本来記号が着いているような色彩体系の中からすべてが生まれたわけではありません。配色自体を見て、その様子を言い表したものがほとんどです。ですから、その配色用語は「雰囲気」、「イメージ」を表す場合も多々あるのです。それを無理矢理(?)体系に当てはめること自体が本来は誤っています。しかし、検定等では、なんらかの決まり事がないと採点できませんから、主催団体を構成する先生方が、議論の末「まあ、これで行きましょうよ」とやっているのでしょう。
ですから、その場合には、主催団体のテキストを合わせて参照してください。

ここに掲げたものは、あくまでも私自身の経験の中から、一定の形となっているものを扱いました。