色の見え方


このページでは、色の見え方の例をご紹介します。これは、色彩心理の項目の一つです。

1.明るさの恒常と色の恒常

・明るさの恒常

 恒常とは、「いつも同じ」という意味。明るさの恒常というのは、ある色があって、その色がいろんな明るさの場所にいっても、同じ色は明るさが一定に(恒常に)見えることをいいます。
 日陰の灰色と日なたの灰色が同じ灰色のとき、その灰色は「あっ、同じくらいの明るさだな」と感じる働きのことです。反射される光の量は、日なたの灰色の方が圧倒的に多いので、もしカメラで撮影すると、日なたの灰色はほとんど白に、日陰の灰色はほとんど黒に写るはずです。しかし、私たちはそのように感じません。私たちの視覚は、光の絶対量ではなく、色が置かれている環境の明るさを1として、相対的に物の明るさを判断しているので、灰色はどこに置かれても「灰色だ」と感じることができるのです。

・色の恒常

 赤いものは、照明の色が違っても「赤いもの」だという具合に、色を照らす照明の色とは区別して同色に感じることです。例えば、黄色いバナナに、赤い光を当てると、バナナの色はオレンジ色になります。しかし、私たちはバナナ自体がオレンジ色をしているとは感じません。オレンジ色に見えているのに、「黄色いバナナだ」と感じます。これを色の恒常といいます。

2.色彩対比

 色と色とが接すると、互いの色が影響しあって、本来の色とは違う色に見える現象です。色と色が接する場合は、「時間的に接する」ときと、「空間的に接する」ときの2通りがあり、両者とも色が違ってみえる現象が起こります。
 前者を「継時対比」、後者を「同時対比」といいます。

・継時対比

 左の図の、オレンジ色を20秒くらいじっと見つめてから、右側の黄色に視線を移し、そのまま見続けてください。黄色が薄い緑系の色に見えると思います。これは、オレンジ色の補色(心理補色残像)のために、本来の「黄色」が違う色に見えてしまいます。このような現象を継時対比といいます。色彩対比現象は、このように、色の補色が生理的に作られるメカニズムが色の見えに影響を与えるものです。

・同時対比

 色と色が空間的に隣接したときに起こる対比です。色の三属性である色相、明度、彩度のそれぞれに対比現象が起こります。
(1)色相対比
 下の図が色相対比の例です。中央のオレンジ色は同じ色なのですが、左の赤の中にあるオレンジの方が黄色っぽく見えます。このように、オレンジの「色相」が変化するので色相対比といいます。
私たちの網膜にある視細胞は、ある色を見ると、その色に対する感度が低下します。たとえば赤を見た場合には、赤に対する感度が低下します。左の図の場合、赤は網膜の一部に映っているわけですから、網膜の一部分の細胞(すい状体)だけが赤に対する感度低下を起こします。これを部分順応といいます。部分順応した細胞は、その細胞だけでなく、その細胞に近接した細胞にも影響をおよぼし、近接した細胞の赤の感度も低下させます。赤い背景の中にある、赤とオレンジの境目には、こうした現象が生じています。赤の感度が低下するという現象は、言い換えれば、その補色である青緑の感度が相対的に上昇している、ということになります。この現象は、赤に囲まれたオレンジの見えにも影響し、オレンジを見るときに、あたかも赤の補色である青緑の色が加法混色されたのと同じ効果を与えます。同時対比のすべての現象には、こうした視細胞の働きが影響しているのです。ですから、ある色に接する部分では、他方の色の心理補色が加法混色された効果が現われる、と考えればいいのです。

(2)明度対比
 色の明るさが変化して見える対比です。下図のように、暗い色に囲まれた(接した)色の方が明るく見える現象です。
(3)彩度対比
 色の彩度が変化して見える現象です。下の図のように、彩度の高い色に囲まれた色は、彩度が低下して見えます。
(4)補色対比
 補色の関係にある色が接すると、互いの彩度を強める現象です。下の図では、左側の緑に囲まれたピンクの方が彩度が高く(=鮮やかに)感じられます。補色対比は左側の緑とピンクの図で起こっています。彩度が高く見える、という現象は、彩度対比と同じような効果を与えますね。
(5)縁辺対比
 色の縁(ふち)で起こるのでこうした名前がありますが、同時対比は言ってみればすべて縁辺でおこるものです。下図は、明度の縁辺対比の例です。中央のグレーに注目してください。このグレーをみると、左隣の明るいグレーに接する部分は、より暗く見えます。逆に、右隣の暗いグレーと接する部分は、より明るく見えます。
その他の現象

(1)面積効果

 面積の大小によって、色が違って見える現象です。面積が大きくなると、より鮮やかに、明るく感じられます。住宅の外装色などでは顕著に表れ、マンセルの明度では、本来の色よりも明度がおよそ1段階ほど明るく見えてきます。

(2)膨張・収縮
  大きさが変化して見える現象です。下の図では、左の黄みのオレンジの方が大きく感じられます。一般に、明るい色、暖色系が大きく感じられます。
(3)進出・後退
 色が進出して見えたり、後退して見えたりする現象です。下の絵では、赤(暖色系)が進出し手前に見え、青などの寒色系の色が後退して見えます。

(4)同化現象
 背景の色が図の色に影響を受け、図の色の属性と同様の性質を帯びて見える現象です。下の図では、図の色(ここでは文字の色)に影響を受け、背景色が明るく感じられたり、暗く感じられたりします。黒い文字の背景色は、白い文字の背景色より暗い色に感じられます。このように文字の明るさに「同化」するので、こう呼ばれます。